【弁護士が解説】親の借金を相続放棄する際の注意
相続が発生した場合、相続人が生前に有していた権利義務は基本的にすべて相続人が承継することになります。
つまり、子が親を相続する場合、預貯金や不動産等のプラスの財産に加え、借金などのマイナスの財産も原則として一緒に相続することになります。
したがって、親が莫大な借金を抱えており、その額がプラスの財産の額を上回っている場合、子が親を相続することにより、多額の借金を返済する義務を負ってしまうことになります。
もっとも、このような事態を回避するために、法は「相続放棄」という手続を用意しており、相続放棄を行うことにより、過大な債務負担を免れることが可能となります。
本記事では、相続放棄の効果や手続の流れ、相続放棄をする際に注意すべき点について解説していきます。
相続放棄の効果
相続放棄を行うと、当該相続人は最初から相続人ではなかったものとして扱われることになります。
もっとも、相続人ではなかったものとして扱われるのは相続放棄をした相続人に限りますので、被相続人が生前に有していた権利義務については、他の相続人が承継することになります。
例えば、父が亡くなりその妻と子(長男・次男)が相続人になるケースにおいて、この次男が相続放棄をした場合、父が生前に有していたプラスの財産及びマイナスの財産は妻と長男が2分の1ずつ承継することとなります。
また相続放棄をした場合、第三者(被相続人の債権者等)に対しても、自身が債務を承継していないことを主張することができます。
相続放棄の方法について
相続放棄をするためには、単に相続放棄の意思表示をするのみでは足りず、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、相続放棄の申述を行う必要があります。
相続放棄をする際に注意すべき点について
上述のように、相続放棄をすることにより過大な債務負担を免れることができるというメリットが存在しますが、以下の点に注意をすることが必要です。
・相続財産の処分行為を行わないこと
法律上、プラスの財産及びマイナスの財産を全て相続することを単純承認といいます。
そして相続人が相続財産の全部または1部を処分した場合、民法921条第1項の規定により、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄をすることができなくなってしまいます。
よくあるケースとしては、相続放棄の意思表示を行う前に①葬儀費用の支払い、②預貯金の払い戻し、③保険の解約返戻金の受け取りなどの行為を行ったことにより、相続放棄をすることができなくなってしまったというケースが挙げられます。
どのような行為が相続財産の処分行為にあたるかについては専門的な判断が必要になることもありますので、相続放棄を検討されている場合、相続財産には手をつけないようにし、どうしても支払や請求を行わなければならない事情が存在する場合には、専門家に相談するようにしましょう。
・相続放棄のための熟慮期間を遵守すること
法律上、相続放棄ができる期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内とされており、この期間内に相続放棄をするか、単純承認をするか、あるいは限定承認(プラスの財産の限度でマイナスの財産を受け継ぐこと)をするかを決定し、相続放棄や限定承認は手続をとらなければなりません。
この3ヶ月の期間を「熟慮期間」といいますが、熟慮期間は裁判所の許可により、伸ばすこともできます。
熟慮期間は「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」ですので、被相続人が亡くなり自身が法定相続人であることを知った時から3ヶ月、あるいは、先順位の法定相続人が全員相続放棄をして自身が法定相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をするかどうかを決める必要があります。
もっとも、自身が法定相続人になったことを知ったものの、全く遺産がないと思っていたために相続放棄をする必要がないと思っていたが、上の熟慮期間後に相続する債務があることを知ったというような場合、債務の存在を知った時から3ヶ月の熟慮期間が始まると解して相続放棄が認められる場合もあります。
被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以上経った後に相続放棄を希望している場合には、一度専門家の見解を得ることをおすすめします。
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弁護士 | 小野 航平(おの こうへい) |
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所属団体 |
神奈川県弁護士会 神奈川医療問題弁護団 |
経歴 |
苫小牧工業高等専門学校電気・電子工学科 豊橋技術科学大学電気電子工学課程 豊橋技術科学大学大学院電気電子工学専攻 神奈川大学 法科大学院 司法修習(62期) 横浜市内の法律事務所に勤務後,2012年小野航平法律事務所設立 2014年3月 法律事務所横濱アカデミア設立 |
活動歴 | 神奈川大学法科大学院アカデミックアドバイザー |
事務所概要
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